迷いと出会い
著者:上総かんな。


気温が段々とあがり、過ごしやすい気候と桜の花が咲き始めてくる3月。
地元のみんなも受験はもう終わったのだろうか。
私はとある駅の前で佇んでいた。
片手には大きなスーツケースと少し大きめなバック。そしてもう片方の手には、地図…………のようなもの。

「…………。」

地図のような紙切れと格闘すること数分、私は息をもらした。

「此処から……、どう行くの?」

地方の人間が都会に来た時、陥ることが多いと思われる症状になっていた。
俗に言う『迷子』。
自己紹介が遅れたけど私は支倉紗鳥(はせくら さとり)、4月から高校に通う15歳。家出とかじゃないから間違えないでね。
私は、高校在学中にお世話になるマンションを探していた。
駅まで迷わずに着いたはいいが、そのあとが踏み出せずにいたという訳。
人見知り故に通行人にも頼れず、ただ時間ばかりが過ぎてゆく。
この性格なおしたいな……。


「はふぅ……」

意味もなく溜息ばかりがでる。
早くしないと日が暮れてしまう。

その時、

「何処へ行きたいの?」

後ろから唐突に声をかけられた。
私は驚いて振り向くと少年が一人いた。
歳は同じくらいだろうか。ちょっと大人びたような少年だった。

「えっと………」

私は彼に地図らしき物を見せてから、行き先を教えた。

「うん、……じゃあついてきて」

心配だったが行き先が通じたらしい。
彼の厚意に感謝して、後をついてくことにした。



10分は経ったのか。私は少し疲れていた。
荷物の半分は彼が持ってくれてるとはいえ、あまり運動が得意ではない私は息が荒くなっていた。
と、突然彼がとまった。

「着いたよ。」

彼が指差す方向に、マンションはあった。

「ありがとうございます、此処まで送ってくれて。」

私は御礼を言った。
すると彼は口を開いた。

「御礼なんて要らないよ。だって此処は僕も住んでるし、こんなのは送ったに入んないよ。」
「え……あ……。」
「あ、僕は大佛郁(おさらぎ たかし)、春から彩桜高校に通う為に上がってきたんだ。」

私は彼――大佛郁をみたまま固まっていた。
だって、このマンションの住人だってこと、春から彩桜高校に通う同級生だということ。
二つの驚きがあったから。

「郁さん……ですか、私は紗鳥、……支倉紗鳥です、私も春から彩桜高校に通うんです。」
「そうなんだー、じゃあ一緒のクラスになれるといいね。」

そう言って、郁はマンションに向き直る。

「じゃあ、中に入ろうか。」

そう言って郁はマンションへ入って行った。
私も後を追うように入る。
こういう優しい人がクラスにいればいいなと思い、私は高校生活を充実としたものにしようと決めた。


桜の花びらも楽しそうに大空に舞っていた。



投稿小説の目次に戻る